POSレジ導入によるクリニックの業務効率化:そのメリット・デメリット
- 2024年7月10日
- 自動釣銭機・セミセルフレジ
「医療DX」は、2024年の診療報酬改定でも注目されている分野です。
2021年3月に始まった「オンライン資格確認」、2023年1月には「電子処方箋」が導入され、医療機関でもデジタル化が進んでいます。
クリニックでPOSレジを導入することで、患者さまの操作だけで精算ができるようになります。
POSレジの導入は、会計業務自体の負担が減るだけでなく、関連する業務の効率化も可能です。
また、待ち時間の減少により、患者満足度が向上することも期待できます。
このようにPOSレジには多くのメリットがありますが、導入の際に気をつけたいポイントもいくつかあります。
失敗のない導入をするために、POSレジ導入のメリットとデメリットを詳しく紹介していきます。
目次
1.POSレジの導入がクリニックの業務効率化にどう貢献するか
POSレジとは、販売や売上情報などのデータを一括で管理できるPOSシステムと、自動でお金を計算する自動釣銭機が組み合わされたものです。
POSレジを導入するメリットは主に以下の5つです。
- 業務効率化
- データ管理の一元化
- 会計処理・収益管理の正確性向上
- 患者満足度の向上
- レポート生成と分析
それぞれ詳しく紹介していきます。
1.1業務効率化
POSレジを導入すると、受付や会計業務がスムーズに進みます。
クリニックによっては、多い所で半日に100名以上の患者さまが来院するところもあります。
十分な人数の医療事務やスタッフが配置されていたとしても、急な対応を強いられることがあり、業務が煩雑になりがちです。
患者さまが来る度に作業の手を止めて対応すると、ヒューマンエラーが発生しやすくなります。
POSレジの導入により、受付や会計業務をする必要がなくなるため、スタッフはほかの業務に専念でき、スタッフのストレスも軽減するでしょう。
1.2データ管理の一元化
POSレジの導入により、患者情報と会計情報の統合管理ができ、データの一元化が可能です。
これにより、患者さまの診療履歴や会計履歴を簡単に追跡できるようになります。
売上のデータ管理も簡単にできます。データはリアルタイムで更新され、即時アクセスと分析が可能です。
従来のレジの場合は、金額をレジに打ち込み、売上データはExcelや帳簿などで管理していました。
POSレジでは精度の高いデータ分析もでき、これにより患者サービスの向上や経営の最適化が期待できるため、クリニックの運営に多大なメリットをもたらします。
1.3会計処理・収益管理の正確性向上
POSレジを導入すると、スタッフが直接お金のやり取りをしなくなるため、必然的にミスが減少します。
従来の会計業務では、お金の受け渡しのミスが起こりやすく、レジ締めの確認作業にも時間を取られていました。
いくら気をつけていても、ヒューマンエラーは起きてしまいます。
POSレジにより、機械的にお金の受け渡しができるため、こうしたエラーが生じないうえ、レジ締めも正確かつ効率的に行えます。
1.4患者満足度の向上
POSレジの導入により、スムーズな会計の手続きが可能です。
会計処理が自動化されるため、診察後の待ち時間が短縮されるでしょう。
患者さまは診察前の長い待ち時間で疲れていることが多く、診察後スムーズに会計ができれば満足度は向上しやすいです。
経済産業省「我が国のキャッシュレス決済額及び比率の推移」の調査によると、2023年には民間の消費額の39.3%がキャッシュレス決済となりました。
以前より、キャッシュレス決済の需要が高まってきており、今後もキャッシュレス決済を進めていくことが政府の方針です。
POSレジによってはキャッシュレス決済を導入できるものもあります。支払いの選択肢が増えることで、スムーズな会計が実現するでしょう。
1.5レポート生成と分析
POSレジは、売上データを自動的に生成・集計し、リアルタイムで管理したうえでレポートの作成が可能です。
レポートから分析をおこない、クリニックの経営状況を正確に把握できます。
日次や月次など、あらゆる種類のレポートを作成できるため、業務の効率化やサービスの向上に役立つでしょう。
また、詳細なデータ分析では、患者さまの来院パターンや診療内容の傾向を把握でき、スタッフ配置や設備投資などを検討できます。
経営の改善策を簡単に確認できるため、クリニックの収益性を高められるでしょう。
関連記事:自動精算機をクリニックで使うメリット7選!患者満足度を向上させよう
2.POSレジ導入のデメリット
このようにPOSレジには多くのメリットがありますが、導入する際には以下のような3つのデメリットも考えられます。
- 導入コストがかかる
- システムトラブルのリスク
- スタッフの適応とトレーニング
それぞれ詳しく紹介していきます。
2.1 導入コストがかかる
初期導入コストが高く、本体だけでも約50万~100万円と高額です。
ほかにも、購入時に設置費用やサポート費用などがかかります。
高価なものになるほど機能が充実している傾向があるため、ご自身のクリニックに本当に必要な機能なのかを検討すると、コストを抑えられるでしょう。
また、購入時だけでなく、維持費として月々の費用がかかることも忘れてはいけません。
POSシステムのトラブルを防ぐために定期的な保守点検が必要です。
業者によって費用は異なりますが、月に5万円程度かかるでしょう。
POSレジは高額なため、金額的に購入が難しければ、リースや補助金を利用するという選択肢もあります。
このようなものを利用して、業務の効率化を図りましょう。
2.2 システムトラブルのリスク
POSレジを使う際に避けられないリスクが、システムトラブルです。
システムに故障や不具合が発生すると、蓄積していたデータの消失や業務停止のリスクがあります。
発生しやすいトラブルとしては以下のようなものがあります。
- 画面がフリーズする
- アップデート後に使えない
- クレジットカードやキャッシュレス決済が出来ない
これらのトラブルは、機械のトラブルではなくネットワーク環境による場合もあります。
また、停電やシステム障害が発生するとPOSレジが使用できない場合が多く、手動での対応が必要になる可能性があります。
いざというときに困らないためにも、導入時にこれらの障害が発生した際の対処法を確認しておきましょう。
システムトラブルを防ぐには、日頃から定期的なメンテナンスが欠かせません。不具合があったら、すぐに相談、対応してくれる業者を選ぶと安心です。
2.3 スタッフの適応とトレーニング
POSレジを導入した場合、まずスタッフが操作を覚える必要があります。
患者さまによってはPOSレジをうまく操作できず、会計に戸惑う可能性があるからです。
そのため、スタッフがPOSレジの操作を理解して患者さまをサポートできるようにしておく必要があるでしょう。
POSレジの業者によっては、スタッフのトレーニングをサポートしてくれる場合があります。
ただし、トレーニングは、普段の業務をしながらの実施となるため、スタッフの負担が大きくなってしまいます。
関連記事:クリニックにおける自動精算機のデメリットとその解消術
3.POSレジ導入時の確認ポイント
POSレジはたくさんの種類があるため、機能、サイズなどクリニックに合ったものを選ぶことが大切です。
選考の際には以下の4項目を確認しましょう。
- 自院のシステムに連携できるか
- 場所は確保できるか
- サポート体制は充実しているか
- キャッシュレス決済を利用するか
それぞれ詳しく紹介していきます。
3.1 クリニックのシステムに連携できるか
POSレジはデータを蓄積したり、一括管理したりできます。
さらに、クリニックのシステムと連携ができると使い勝手がよくなります。
電子カルテやレセプトコンピュータと連携できると、必要な情報を自動的に取得してPOSレジに反映できるため、受付や会計の業務効率化やミスの防止につながるでしょう。
手入力の手間や計算ミスなどのヒューマンエラーを回避できます。
導入を検討しているPOSレジが、既存システムと連携できるかを確認してみてください。
3.2 場所は確保できるか
POSレジは、以前よりもコンパクトになってきましたが、それでも、ある程度の設置スペースを確保する必要があります。
購入を検討しているPOSレジはカウンターにおさまるか、確認が必要です。
設置スペースが確保できたとしても、患者さまが通りにくくなったり、スタッフの作業がしにくくなったりしたら意味がありません。
POSレジを導入する際は、さまざまなシチュエーションを想定してスペースを用意しましょう。
3.3 サポート体制は充実しているか
システムや運用に対してのサポートが充実しているかを確認しましょう。
POSレジはとても便利な機械ですが、システムエラーや不具合はつきものです。
いざというときに、十分なサポートを受けられるか、操作トレーニングを支援してくれるのかなどを導入検討の際に確認しておきましょう。
サポートとして、以下の内容があると安心です。
- 導入前後のコンサルティング
- 教育、トレーニング
- システム障害対応
- 保守メンテナンス
3.4 キャッシュレス決済を利用するか
会計方法の選択肢を増やすことは、患者満足度の向上と、患者さまの未収金対策に効果的です。
POSレジの支払には現金のほか、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済といったキャッシュレス決済を利用できるものがあります。
先述したように、現代においては支払い全体の約4割がキャッシュレス決済です。
医療機関でもキャッシュレス決済の対応によって、患者さまの支払の選択肢が増えるでしょう。
キャッシュレス決済の導入に併せて、現金の取り扱いについても検討するのがおすすめです。
現金はいくら使うのか、どこに保管するかなどを検討し、スムーズにPOSレジを導入しましょう。
関連記事:病院の自動精算機の使い方4ステップ!クレジットカードの使い方も解説
4.クリニックでの導入例
具体的にクリニックでの導入例を紹介します。
ある内科クリニックでは、コロナ禍により非接触型の会計方法が求められたことと、会計処理の効率化、患者満足度の向上、データ管理の一元化を目的にPOSレジを導入しました。
導入前は以下のような課題がありました。
- 医療事務の会計業務のミスが多発
- 長い待ち時間に対する患者満足度の低下
- コロナ患者との接触回避
POSレジ導入後
[メリット]
①会計業務が大幅に効率化され、医療事務の負担が減少しました。これにより、会計処理時間が約30%短縮され、患者さまの待ち時間も短縮しています。
②スタッフの業務負担が軽減され、患者対応により多くの時間を割けるようになり、サービスの質も向上しました。
③患者情報と会計情報の統合管理により、データの即時アクセスと分析が可能になりました。売上データや患者情報が自動で一元管理されるため、経営状況の把握や経営戦略の立案が迅速かつ正確に行えます。
[課題]
一方、事前にシステムトラブル時の対応準備が必要なことや、スタッフの効率的なトレーニングという点に課題があったようです。
①システム故障時にはデータ消失や業務停止のリスクが伴うため、バックアップシステムの整備や手動対応の準備が必要でした。
②スタッフへのトレーニング期間中は、一時的に業務効率が低下することがありました。
5.まとめ
POSレジは、クリニックでの会計や管理業務を効率化し、精度を高める革新的なシステムです。
受付や会計業務がスムーズになり、待ち時間が短縮されることで患者満足度も向上します。
しかし、導入コストの高さ、システムトラブルのリスク、スタッフトレーニングの必要性といったデメリットも考慮する必要があります。
機械の種類は多岐にわたり、機能や使用方法もさまざまです。業務の効率化のメリットとデメリットのバランスを考えて、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
MEDIREGIなら、無料で専門のコンサルタントに相談でき、サポート体制も充実しています。
医療DXに精通しているため、ほかの機器との連動についても検討できるでしょう。
まずはご相談してみてください。
著者PROFILE
- 医療機器メーカー営業としてキャリアをスタートした後、医療ITベンチャーにて生活習慣病向けPHRサービスのプロダクトマーケティング責任者をはじめ、メルプWEB問診の事業責任者を経験。その後、クリニック専用の自動精算機・自動釣銭機の商品の企画・開発を手がけ、現在は「医療を便利にわかりやすく」をミッションにスマートクリニックの社会実装に向け同事業の企画・推進を担当。
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